記事, ケアファーム論文

イタリアのケアファームにおける実情と課題

画像引用元:“Depden Care Farm

2019年時点のイタリアでのケアファームに関して、全国レベルのプロジェクトで収集されたデータをもとに実情をまとめた研究論文です。イタリアのケアファームの事業内容やファームでの活動内容、対象とする利用者の特徴などが主なコンテンツです。今後、イタリアで人気が高まっているケアファームによる社会的なイノベーションをさらに推進するためには、福祉や農業従事者だけでなく、政策立案者など官民問わず様々な分野の人の関心と協力が必要であると結論付けています。イタリアでのケアファームの全体像を理解し、これからの課題を参考に日本でのケアファームの推進を行う上で、様々な立場の方にとって有用な情報です。 (言語でソーシャルケアファーミングに関して、より日本で一般的なケアファームとして表記しています)

 

抄録

過去10年間、ケアファームは、イタリアとEUの都市部と農村部のための多機能農業と新しい社会サービスを結びつけることができる革新的な実践となっている。イタリアの歴史を見てみると、ケアファームは国の領域に沿って一様に発展してきたわけではないことが分かる。その特徴は、補完性、関係性の価値、共同生産などのいくつかのトピックが複数の意味と応用を見出している福祉の発展に関連した広範な活動である。本論文は、この種の活動に関する知識にさらなる貢献をするとともに、このトピックについてのより深い考察を提供する。

本研究で報告された情報は、2018年に誕生し、イタリアの農業起業家の主要組織であるColdirettiが推進する財団Fondazione Campagna Amicaが実施したプロジェクトに言及している。本稿では、このプロジェクトで収集されたデータの分析を中心に、2018年7月から2019年3月にかけて229の農業企業の間で実施された綿密なインタビューや、SFに関わるコルディレッティの地域事務所の代表者との会合を通じて、その分析を行っている。本研究は、全国の農家ネットワークの視点からイタリアにおけるケアファームの発展についての理解を深め、類似点と相違点を検討するために地域間でケアファームの実践を比較することを目的としている。最も重要な結果は、多様な農業活動と家畜システムを持つ個人経営の大規模農場であり、明らかに園芸が優勢であることを示している。これらの農家は、主に直売や教育活動、研修、職業紹介を行っている。

 

4.1. 農場の特徴

 ケアファーム活動を実施している農場はほとんどが個人農場(58.5%)であり、「これはイタリアの農業部門の現在の傾向と一致している」。

ケアファームの農園の農業生産は非常に多様であり、ほとんどの場合(78%)が適切に管理されており、環境に配慮した生産方法(統合農業、バイオダイナミック農業、認証有機農業など)は「ソーシャルファーミングと環境に配慮した技術との間に強い結びつきがあることの表れ」である。

同一農場内でどのような活動が主に行われているかを考えてみると、同一農場内で同時に行われている活動は、園芸、家禽、果樹生産の 3 つが主であり(頻度 147)、次いで 2つの活動を同時に行っている農場(園芸と果樹生産の頻度 124)、4つの活動を同時に行っている農場(園芸、家禽、ロバの飼育、その他種苗の飼育の頻度 80)となっていることが重要である。これらの頻度を図 4 に示す。

図4.ソーシャルファームの活動数と頻度

 

農場の垂直的多様性

 分析対象となったサンプルのうち61%は、少なくとも10年以上ケアファームに従事している農場で、「彼らの先駆的な活動は長年にわたって統合されており、そのため、この調査では非常に興味深い」。ピエモンテ州では、養鶏を行っている農家の割合が高く(31)、次いでプーリア州(13)、トスカーナ州(11)となっている。サンプルのうち、14.4%はこのセクターで少なくとも6年以上経営している農場であり、23.6%は 「スタートアップ」(つまり、このセクターで経営を始めて1年から5年以内)と考えられている。

これらの農場は、「社会的目的のために利用可能な仕事の多様化を可能に」(図 5)し、それに伴う生産の多様化を可能にする 1つ以上の関連する活動と、農業および/または家畜生産活動とを組み合わせている。

図5.ケアファームの関連事業

 

4.3. ケアファームの今後の活動

 農場の特性と利用者のニーズに基づいて、前述のカテゴリーの活動は、地域の事業者によって様々なサービスで満たされている(図 6):トレーニング(140箇所)、職業紹介(138)、デイサービス(100)、レクリエーション活動の実施(87)、サマーステイとスクールキャンプ(76)、共同セラピーとリハビリテーション活動(64)、夜間型のサービス(25)、子育て支援サービス(19)。

図6.ケアファームで提供されるサービス

少なくとも 1 つの SF プロジェクトに参加している農場では、囚人、脆弱なコミュニティに属する成人、障害者、難民、高齢者など、さまざまなタイプの利用者を対象としている(図 7)。図7.ケアファームで提供されるサービス

各個人への最低限の配慮と、作成されたパスの間のサービスの「個人化」を保証するために、利用者は個別に、または3人までの小グループで、受け入れられている(ほぼ70%の農場にて)。サンプル(35%の農場)が報告した主なイノベーションは、新しい共同作業や社会的関係のネットワークの立ち上げであり、「このセクターが、既存のスキルをリンクさせて新しいものを生み出すことができることを確認している」。

 

結論

ケアファームの理解と知識を深め、新たなイノベーションを促進するためには、官民を問わず、すべての関係者の関与に焦点を当てる必要がある。そのためには、以下のようなニーズがある。

  • イノベーションが生まれ、発展することができる肥沃で自由な環境。
  • イノベーションの内容を定着させ、発信し、文化的なアプローチや知識を社会化することができる革新的なアクター。
  • 変化を促進し、形式化し、イノベーターの重要性を認識することができる制度的主体。
  • 革新的なアイデアをもたらす人々だけでなく、政策、立法行為、および革新の内容の意思決定プロセスに参加することによって、それらのアイデアを促進し、伝達する能力。
  • 意思決定機関に参加している協力者は、危機の時代に新しい答えを与えようとするために、革新的なアイデアを優先させる必要があり、このように革新を通じて解決策を見つけることが期待されている。

記事引用元:MDPI

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