土地活用

生産緑地開発の落とし穴

画像引用元:“Depden care farm

生産緑地の2022年問題 生産緑地を宅地化して売却するということであれば、もちろん地主さんはもっとも高く売れる先を探すであろうし、買収を望む側も複数いれば、相応に競争もおきるので、課題はどの土地が高く売れるのか、どの部分が高く売れるのか売却後の税金など限られたものになると思います。しかし不動産を利用した事業(土地有効活用)は事業性への判断、安全性などを含めた総合的な判断が必要であり、税務、FP、不動産、建築、事業企画の各専門家のチームが不可欠と考えています。 ただし、その専門家が集まった結果でも偏った方向性になる例をご紹介します。

 

生産緑地にヘルスケア施設の計画

都内23区で約2500㎡の生産緑地が解除となるためヘルスケア施設による土地有効活用を計画しているが、設計終了後に工事予算がオーバーして当初の収益が得られないとの相談があった。当社のコンストラクションマネージャー業務への依頼であったが、実態は違った。

路線価から推定される地価は少なくとも坪120万円を超える。
9億円の土地である。この土地の全面にヘルスケア施設を建設して一括貸しの計画であるが、一部2階建ての平屋木造であった。

東京都では他県と違い2階部分が400㎡以上あるヘルスケア施設は耐火構造としなければならないという条例がある。2階をこのギリギリの400㎡で計画したのはおそらく、この条例に基づき工事費をできるだけ安価にするために、準耐火構造で設計されたものと推測する。一括賃貸の家賃は年間3600万円、キャッシュフローも年間1200万円得られる計画である。

 

何がいけないのか

土地と一体の建物で一般賃貸契約を結ぶ運営事業者は当然メリットのある限り、賃貸契約を存続する。その間の土地建物の売却価格はどうなるであろうか。
家賃付きの土地建物であるから、利回り商品である。木造を考慮して表面利回り要求6%ならば6億円、時間経過とともにそれが8%となると4億5千万円、さらに売却の時期によって建設費の残債を整理しなければならない。
更地ならば現在9億円の土地がである。
実質的にこの土地は借り入れの返済が終了し、運営事業者が自主撤退するまで「売れない」土地になるのである。

・土地活用コンサルタントは地主と運営事業者のマッチングを目的としていた。
・建築会社はとにかく坪単価が安い建物が建築主にメリットが有ると考えた。
・設計事務所は単に建築会社の指示に従った図面を作成した。
・会計事務所は投資に対するリターンと収支計算の試算にのみ注目していた。
・銀行は土地の担保に対する借入金の妥当性と金利の提案を検討していた。

この計画に係わったプロである、これらの誰かが気づいてもおかしくはないが、結局指摘されることがなく、実施設計過程を終了してしまったのである。

 

土地有効活用のシミュレーションの結果

耐火木造とし敷地をできるだけ有効利用することにより、将来売却または、追加で活用する土地を余剰地として確保することが、終了した設計料を負担精算しても遥かにメリットがあることを納得していただいて、再設計となった。
宅地化した土地を単純に売却するだけならば問題は起こりにくいが、生産緑地のような都心部の低利用地では、このようなことが起こりえる。
売却の可能性を封じてしまうことは、将来起こりうる次世代の相続などを考えるとありえないと言っていい。

各専門家の領域での助言をあつめても、総合的な視点と知識がなければ、土地所有者のニーズに応えられないケースがある。

生産緑地土地有効利用 Before


地価を坪150万円とすると、広大地であることを考慮しても8億円ほどの価値になる。
準耐火構造でおそらくはスプリンクラーを簡易型に納めるために平屋と2階建の建物を渡り廊下で接続しているために広い土地をすべて利用している。
確かに工事費はこの方式が一番安く収まるが中途半端な土地が残り、テナント駐車場として利用しても、地主のメリットにつながらない。
テナントは一般借家なので、退出時期は不明でその間は土地建物の利回り物件としてしか評価されない。
家賃を300万円としても年間家賃3600万円。新築時利回り6%と評価されても6億円であり、もし新築時に売却すると投資金額約4億円を返済しなければならず2億円しか残らない(税金等の計算は略) 20年後に仮に8%利回りと評価されても4.5億円であり、残債はやはり残っているので、状況は変わらない。
結局、売れない土地になる。

生産緑地土地有効利用 After


木造で建設単価が上がっても耐火構造を選択し、容積率を有効に利用して最小の敷地で建設を計画する。
配置によってテナントの賃料は変化がないので(店舗等は別の場合があるが)将来の残地は路線価が高く、結果土地が高く売れる方を優先して残す。
固定資産税の特例により当面全体を敷地とし固定資産税の減額をおこなう。
テナントとの賃借は建物が既存不適格とならない範囲で将来の敷地分割線を想定し、その範囲でおこなう。想定された賃貸料は計画変更前と同じ。
残地は必要な時に売ることができる。また、駐車場として貸しても70台分の駐車場となる。
しかし、当初から計画に参加できれば、残地部分を生産緑地として残し、最小のコストで将来に引き継ぐことが最善であったかもしれない。
ケアファームはこのようなケースにひとつの回答となる。

記事引用元:都市緑地 太田

コメントする

*
*
* (公開されません)

Language