介護は人が支えている

介護は人が支えている

介護業界のシェア分布

令和4年度の介護給付費は、年間予算12.3兆円です。
(令和4年3月24日 厚生労働省老健局 介護保険制度をめぐる最近の動向について

2020年~2021年の介護業界の売上トップを見ると、1位のニチイが1,537億円、2位のSOMPOホールディングスが1,318億円、3位のベネッセが1,238億円、3社の合計は4,093億円、介護給付費全体でも3%ほどのシェアしかありません(実際には、介護給付費以外の収入が多くを占めていることも想定できるので、更にシェアは少ないと想像できます)。

介護業界の最大手でもそれくらいのシェアしか持っていないことを考えると、介護保険で事業所を経営する法人は、極めて小さな法人が乱立しているということが数字から見えてきます。

私の住むエリアの介護事業所も、大きな法人は更に大きく、小さな法人は足踏み状態が常態化しています。施設の公募があった際に通るのは、ほとんどが同じ法人で、小さな法人は拡大する体力(資金)や人材が慢性的に不足しています。余力がないから、新しい機器や人材にもなかなか設備投資が進まず、法人として大きくなるチャンスも少なくなっているように感じます。

 

ある黒字経営者が考える課題

先日、介護事業を営む企業経営者と話す機会がありました。地域では名の知れた会社で、10年程前にデイサービスを立ち上げ、訪問介護やショートステイ、有料老人ホーム、サ高住など、地域に複数の事業所を経営しています。その方は他業界出身で介護現場での経験はなく、現場は管理者が仕切っているということでした。どの拠点も数字上は悪くない経営状態で、特に経営上の悩みはないように見えました。

「現在、御社の一番の課題は何ですか。」と聞いたところ、迷わず「人がいないところです。」という答えでした。

介護職員が不足しているのは介護業界全体に共通している悩み・課題であり、その会社に限った話ではないのではないかと聞くと、「現場の介護職員は当社でも決して潤沢にいる訳ではなく、何とか回っている状況です。今後も事業を拡大していく中で一番の課題は、経営的な立場で管理者として会社を大きくしていける人材がいないところです。」という回答でした。

 

介護施設の管理者の現状

介護の現場で働く職員であれば、介護技術や知識は時間とともに身に付きます。しかし、必ずしも全ての社員が管理者を経験する訳ではありませんし、管理職として向き・不向きがあるのも確かです。

  • 経営的に非効率でも、介護業界で当たり前に行われていることがある
  • 利用者最優先と経営という相反する考えを持つ必要がある
  • 福祉と事業経営という意識を同時に持つ必要がある

他業界から入ったこの経営者は、そこに大きな違和感を感じたといいます。私は、この辺りが、福祉のみを学んできた人が葛藤する考え方のひとつになっているのではないかと考えています。

介護の現場で直接介護に従事するのも人の力、そして事業所の経営を回していくのも人の力です。その方と話していて、人の力の大切さに改めて気付かされました。

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