ケアの質、環境の質、経営の質

ケアの質、環境の質、経営の質

サービスと経営の両立

先日、特別養護老人ホームの職員がユニットリーダー研修を受講してきました。ユニット型の特別養護老人ホームでは、ユニットリーダー研修を終えた職員を配置する必要があり、そのために研修が必須とされています。

受講先は山間部にある小さな町の特別養護老人ホームで、経営主体は行政です。研修を終えた職員からは、「利用者の居住環境がとても素晴らしく、しっかりとしたケアが行われている施設でとても参考になった」という報告をもらいました。研修を終えた職員のモチベーションは高く、同じようなケア環境づくりに取り組みたいと、意欲を持って話してくれたのがとても印象的でした。

その後、その職員から当該施設のパンフレットや取り組みについての資料を見せてもらいました。資料を見てひどく驚いたのが、とにかく経営状況が悪いことです。毎年数千万円単位での赤字経営が何年も続いていました。研修を受け入れてくれる施設は、おそらくどこも素晴らしい施設ばかりでしょう。素晴らしいケアや環境は、もちろん他の施設のお手本になるものだと思います。ただし、経営的にも素晴らしいかは別問題だということです。

 

厳しさを増す介護施設の経営

介護施設の経営は、昔と比べてとても厳しい状況になってきています。人手不足や物価の高騰、上がらない収入に対し、上がっていく人件費など、原因はいくつもあります。特別養護老人ホームのような施設より小さな事業所の経営は、更に厳しくなってきており、それは倒産件数などにも表れています。(参考:東京商工リサーチ「介護事業倒産」減少から一転、コロナ禍の利用者減とコスト増で大幅増 倒産が本格化の兆し

私はその施設の経営状況を見て、サービスに傾きすぎて、経営がおざなりになっていると感じました。継続的な経営につながるのか、行政の経営だから採算度外視できるのではないか、と疑問に思いました。その職員と面談をした際に経営状況の話もしましたが、あまりピンとこなかったようです。役割の違いなので問題はありませんが、少なくとも経営者や管理者は一歩引いた目線で表と裏を見る必要があると思います。

 

ケアファームによる差別化と経営安定

私たち介護事業者の一番の使命は、継続して事業を続けること。どんなに素晴らしいケアをしても、潰れてしまったらその使命を果たすことはできません。しっかりとした経営の舵取りをしながら、最善のケアに取り組む必要があります。

私が勤める特別養護老人ホームは、稼働率や単価によって収入が決まります。決められた保険点数の中でしか経営ができないのは仕方がありませんが、サービス付き高齢者住宅や有料老人ホームなどは、工夫次第では収入を上げることが可能です。

先日、新潟県に開設されたケアファームを見学させて頂く機会がありました。これからの介護経営において、差別化は生き残りに繋がっていくものです。ケアファームなど特徴のある施設は、差別化において大きなアドバンテージになると感じました。

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