介護現場における心理的安全性

介護現場における心理的安全性

介護職員の定着率が良い施設・悪い施設

介護業界は職員の定着率が悪い業界と言われますが、私も実感としてその通りだと思っています。介護業界が相対的に定着率が低い原因を考えてみると、

  • 求人が多くあり、売り手市場のため転職が容易である
  • どこで働いても待遇面は大きく変わらず、(施設・事業所側は)差別化が図りにくい
  • 介護はチームプレイなので、人間関係でトラブルになりやすい

など、さまざまな要因が考えられます。

一方で、定着率が良い介護施設・事業所があるのも事実です。私が話を伺った介護施設の中にも定着率が良い施設はいくつかありました。

  • 介護職員間の人間関係が良く、トラブルが少ない
  • 他の介護施設より待遇が良い(無借金の社会福祉法人、内部留保が潤沢)
  • 過疎地域で職場が少なく、転職が容易でない
  • 評価が公正で、やりがいを持って働ける仕組みがある

など、個別の事情も少なくありません。

 

介護業界における人間関係の難しさ

介護業界の場合、人間関係のトラブルや問題はどこの施設でも多かれ少なかれあると思われます。

介護職員の場合、20代前半の新卒の若手の職員から60歳を過ぎたベテランの職員までおり、親子どころか孫・祖父母世代の人たちと働くこともあります。また、全くの未経験で介護業界に入る職員から、大学で専門的に介護を学んでくる職員まで、知識の差が大きいのも特徴ではないでしょうか。

言うに及ばず、介護職員だけでなく看護職員やリハビリ職員など、異なる職種で入所者・利用者をケアする仕事ですから、価値観もなかなか同じにはなりにくい面もあります。私も介護現場で起きた職種間の意見の不一致の間に挟まれ、悩んだことが数多くあります。

 

介護現場における心理的安全性

介護の現場では、入所者・利用者のためという目的は同じであっても、それぞれの職種の価値観で意見がぶつかることがあります。そのためにも、心理的安全性のあるチームが大切になります。

心理的安全なチームとは、一言でいうと「メンバー同士が健全に意見を戦わせ、生産的でよい仕事をすることに力を注げるチーム・職場のこと」です。(中略)日本の組織では、①話しやすさ、②助け合い、③挑戦、④新奇歓迎の4つの因子があるとき、心理的安全性が感じられるということです。
引用:心理的安全性のつくりかた 「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える
(石井遼介著・日本能率協会マネジメントセンター)

新しく入った職員が、分からないことを「分からない」と言いにくい職場、相談しにくい雰囲気の職場では、職員の定着率が低くなるでしょう。声の大きい(強い意見を言う)職員に、「この前、言ったよね!」「何回言えば分かるの?」などと言われたら、普通の人はもう一度聞きにくいものです。介護現場では人の命を預かっている側面もあるため、緊張感を持って働くことは大事ですが、介護施設の雰囲気はそれと同じくらい大切です。

また、チームプレイで介護をするので、助け合いも重要です。以前、新人職員にキツくあたるベテラン職員に「誰でも最初は新人なんだから、分からなくて当たり前ですよ」と話した時には、「自分は先輩から厳しく教えられてきたので、同じように接してきた。厳しくするのが当たり前だと思う」と言われたことがあります。今は昔の職人のように「背中を見て覚えろ」と、努力や根性だけで人を教育する時代ではありません。

 

介護現場における心理的安全性がもたらす効果

介護の仕事は、ケアの質や接遇の成果を数字で表すことは非常に困難です。稼働率や収入のように数字では見えにくい仕事であり、時間や手をかけようと思えばいくらでもかけられる仕事ですし、逆に手を抜こうと思えばいくらでも手を抜けてしまう仕事でもあります。だからこそ、皆が納得して働ける基準や環境が大切になります。

介護施設の管理者は、職員が働きやすく、やりがいや目的を持って働ける職場、コミュニケーションが取れる風通しの良い職場を築くことが大切です。心理的安全性によりモチベーションを上げれば、結果的に、ケアの質の向上や入所者・利用者の満足、また介護職員の従業員満足度(Employee Satisfaction:ES)にも繋がっていくと思います。

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