介護は突然やってくる ~私の体験~

介護は突然やってくる ~私の体験~

さまざまな介護の始まり方と介護の方法

私はこれまで20年近く介護業界に携わり、多くのご利用者やご家族を見てきました。介護が始まるきっかけは人それぞれで、加齢により身体機能や認知機能が徐々に衰えて介護が必要になる方、病気やケガをきっかけに介護が必要になる方など、さまざまです。

介護保険開始から20年以上経過して、多くの介護サービスが充実してきました。これまでは自宅や家族で担ってきた介護を、介護保険を利用して外部に依頼することも一般的になりつつあります。しかし、家族や周りに介護が必要な方がいなければ、介護保険や介護サービスに馴染みがない方も多いのではないでしょうか。

 

よくある介護相談

介護業界にいると、知り合いの家族の介護相談を頻繁に受けます。

  • 介護が必要になったら、どこに相談すればよいのか。
  • 祖父が入院中だが、帰宅して介護が必要になっても看ることができない。
  • 介護施設はたくさんあるが、違いが分からない。

など、一刻を争う深刻な問題から、なんとなくの心配まで。
最近では、自分や周りもそのような年齢になってきたのだと実感することが多くあります。

 

私の義母の場合

ここで、つい先日起こった私の実体験をお伝えします。

祖母は10年ほど前に在宅介護を経て施設に入所し、数年後に亡くなっています。それ以来、介護を必要とする身近な家族はいませんでした。両親は70歳代前半で元気に生活しており、妻の母も同年代、妻の父は他界しています。

65歳を越えると、介護保険の第1号被保険者として、介護が必要になれば介護保険を利用できます。ただし、実際の介護現場では60歳代、70歳代の方は決して多くありません。統計では、70歳以上75歳未満の方の認定率は約6%ほどとされています(男女共同参画局「男女共同参画白書 平成30年版」要介護認定者数と認定率(年齢階級別))。

自分の身近で介護が必要になる人が出るとは、まだ思っていませんでした。

しかし先日、義母が脳出血で救急搬送されたのです。義母は一人暮らしで70歳代前半、短い時間ですがパートタイムで働いており、その日も仕事でした。仕事中に調子が悪くなり、娘である私の妻に電話で「病院に連れて行って」と連絡が入りました。当初は腕に力が入らないという訴えで、整形外科を受診しようと思いましたが、かかりつけ医が休診だったため脳神経外科を受診することになりました。その時は少しの介助で車に乗れましたが、到着すると自分では動けない状態になっており、車椅子でなんとか受診しました。医師から「脳梗塞だろうから、すぐに救急車を呼びます」と言われ、そのまま救急車で総合病院へ搬送されました。

総合病院へ到着してからも会話はできており、妻に「どこも痛くない」と言ったり、孫のテストの心配をしたりするなど、そこまで重症には見えなかったといいます。しかし、検査を進めるうちに、次第に右手が脱力し、言葉も覚束ない状態になっていきました。CT検査の所見では、かなり広範囲の脳出血が確認されており、医師からは「救命が最優先」と説明があって入院となりました。手術も行える状況ではなく、妻には「恐らく今後は完全介護になるだろう」と、かなり厳しい状態である旨の説明がありました。

つい半日前まで普通に生活をしていた家族が、ある時突然、介護なしでは生活できない状態になり、会話や経口摂取もできなくなってしまう。そんなことは考えたこともありませんでした。義母は昔から「みんなには迷惑をかけたくないから、何かあれば施設に入れてね。できれば迷惑をかけることなく亡くなりたい。」という考えの持ち主でした。そんな希望も虚しく、もしかしたら一番なりたくない状態になってしまった…と考えると、家族である我々も心が痛いばかりです。

 

現在の状況

現在、入院から1ヶ月ほど経ちました。幸い一命は取り留め、急性期病床からリハビリ病床に移るまでに回復しています。しかし、コロナ禍の影響から面会も叶わず、実際の本人には入院後一度、娘である妻が10分ほど面会できただけです。その際は、経鼻経管栄養がされベッドで寝たきり、会話はできない状態だったようです。恐らく、今後一人暮らしの再開は難しく、どこかの施設にお世話にならないと生活はできないだろうと思っています。近々、介護認定調査が予定されており、ある程度のリハビリが終われば介護施設を探すことになるだろうと思っています。

入院して1ヶ月経っても状況が分からず、我々も今後どうすればよいか検討もつかない日々を送っています。病院ではコロナウイルスの影響で、こちらからの連絡は一切受け付けてもらえず、「何かあれば病院から連絡しますので」の一点張りです。現在のところ、病棟を移動したという連絡があった後の状態が全く不明です。意思疎通がどこまで取れるのか、取れないのか。リハビリでどこまで回復するのか、しないのか。それにより、私の方で探さなくてはいけない施設が変わってくると思っていますが、連絡がないため状況が分かりません。

 

今回の経験から感じたこと

自分の家族がこのようなことになるとは想像もしていなかったので、当然ながら介護の準備など何もしていませんでした。義母は日頃から、年金や生命保険、各種の契約などをしっかりとファイルにまとめておいてくれたので、私たちはそれを確認して、今後どうすればよいかを考え、家の整理やさまざまな解約手続きなどを進めています。

私は仕事柄、どこで誰に相談すればよいか、どのような手続きが必要かなどが分かっていましたし、義母もしっかりと身辺整理をしてくれていたので、そこまで慌てることはありませんでした。しかし、そのような準備ができていない人は本当に多いのではないかと思います。誰でも自分が急に病気になるなんて考えたくないでしょうから。

今回の経験から、将来の生活や高齢者住宅の選び方などについても、もっとしっかりと話し合っておくべきだったと思いました。特に世帯が別であれば、お金の準備や懐事情(年金や生命保険など)は、普段なかなか話し合うことが難しい問題です。しかし、いつどこで誰に介護が必要になるか、ある日突然そんな状況が訪れるのかは、誰にも分からないのです。私がそうだったように。

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