スペイン/セラピーのためにデザインされた自然

スペイン/セラピーのためにデザインされた自然

画像引用元:“Asociación Experientia

自然が人々の健康にもたらす効果は科学的に証明されており、冒険を通じたセラピー、自然の中でのセラピー、森林浴など、緑の空間に浸ることで治療効果を得る方法論が展開されてきました。
また、自然空間のデザインに関連した新しい分野も開発されており、最終的には患者さんに治療とリハビリテーションのサービスを提供することを目的としています。
これがアメリカ園芸療法協会(AHTA)のセラピーガーデンの定義です。これらのスペースは通常、ユーザーの感覚を刺激する数ヘクタールの自然の領域です。

病院や他の保健センターと連携して、患者さん、家族、労働者の健康を改善し、幸福を生み出すためのヒーリングガーデンがあります。
庭園のデザイン自体が、それを利用する患者さんの臨床診断を考慮し、医療の補完としてリハビリテーションに寄与する要素を取り入れるのであれば、その庭園は治療庭園(セラピーガーデン)でもあります。
つまり、セラピーガーデンはヒーリングガーデンの一種でもあります(Fundación Cosmos 2016)。

 

スウェーデン・アルナープのセラピーガーデン

セラピーガーデンに関する重要なプロジェクトは、スウェーデン農業科学大学がアルナープのキャンパスで開発されました。2001年に設計され、1年後には下記の目的を果たすべく稼働開始しました。

  • 燃え尽き症候群(長引く疲労、うつ病、慢性的なストレス)に悩む人に治療法を提供する 。
  • この種の治療の人々への効果に関する研究を促進する(Stigsdotter & Grahn 2003)。

 

ガーデンデザイン

セラピーガーデンは、それぞれのエリアに異なる自然の要素が含まれており、患者さんの治療に特化した目的を果たすように設計されています。
患者さんのニーズや治療の進捗に応じて、ガーデン内のエリア間で進行するようになっています(AHTA)。
治療を始めたばかりの人や、精神的・肉体的に衰弱した状態にある人のためのエリアは、休息と熟考のために設計されており、草原や小さな森のような広い空間に様々な種類の植物が植えられています。
活動が活発になるように、そして治療に積極的に参加するようにとの目的で設計されたエリアでは、ガーデンの手入れや小動物の世話、または果物を収穫や、ガーデニングを実践できるようになっています。(Grahnら、2007年)。

ランドスケープ・ガーデナー、園芸療法士、作業療法士、精神科医、心理療法士などの学際的なチームが協力して、患者さんが自然の中に浸り、その治癒力の恩恵を受けることができるようなっています。Stigsdotter & Grahn 2003)。

 

スペインのセラピーガーデン

癒しと治療的な庭園を設計する建築とランドスケープスタジオ「cómo crear historias(物語を作るには)」では、都会にオアシスとしてヒーリングガーデンを作るという理念で活動しており、患者さんや来院者、スタッフのストレスを緩和できるようにと活動しています。
ヒーリングガーデンは、異なる利用者間の交流のためのリラックスした環境を提供するだけでなく、セラピーやリハビリテーションの発展のためのスペースを提供することができます(García Fernández 2019)。

「cómo crear historias」では、患者さんや家族、スタッフたちがどのように成長していくのか、ルート、行動、相互作用、ニーズなどを探るために、空間を利用するすべての人々との参加型デザインプロセスや、環境の民族誌的分析を含む、彼ら独自のヒーリングガーデンの作り方を持っています。

このスタジオでは、関係者たちの交流や運動の機会を提供するために、アクセスしやすい庭園を設計しています。人々が意思決定をしたり、社会経験を積んだり、必要に応じてプライバシーを求めたりすることができる場所として、自然の中からの癒しを感じられる場所の提供を提供しています。

現在、スペインでは公共のものでも、病院や老人ホームにあるものでも、多くのセラピーガーデンがあります。
その一例として、コスラーダ(マドリード)にあるセラピーガーデン「ロス・センティドス」は、アルナープのような過去の経験をガイドにしています。
同様に、アルツハイマー病や認知症の高齢者における園芸療法に関連した既存のエビデンスを利用しており、注意力の向上、ストレスの軽減、痛みの知覚の改善に有益であることが示されています(Detweiler et al)。
「ロス・センティドス」は、コスラーダの人口の25%を占める障害者や高齢者が利用しており、なるべく利用者の要介護度合を減らせるように、そしてアクティブな高齢化を促進するために、2018年に町議会によって発足しました。
利用者の認知、感覚、身体能力を刺激するためのさまざまなモジュールがあり、それぞれの患者さんの特性を考慮に入れて、ニーズに合わせた介入を展開しています。

記事引用元:Asociación Experientia

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