介護施設のレクリエーションの現状
「ここの施設に入ると、こんなことさせられるの?」
私が介護施設の責任者をしていた時に、見学に来たご家族に言われてハッとさせられた言葉です。
そこは特別養護老人ホームだったので、認知症の方、介護度が高く寝たきりの方が多くいる介護施設でした。その時、食堂に入居者が集まっておこなっていたレクリエーションは、その方から見たら、さながら子供のお遊戯に映ったのでしょう。見学に来られた方は介護の専門家ではありません。決して悪気があった訳ではなく、ごく自然な疑問だったのだと思います。
身体を動かしたり声を出したりというのは、身体が不自由になった高齢者の方にとって、元気な私たちとは違う大変さがあるのだと思います。手を上げたり、声を出したりすることも高齢者にとってはリハビリの一環です。でも介護の専門家ではない人から見ると「なんでこんな子供っぽいことをさせられているんだろう」そんな風に思ったのでしょう。
実際、そのようなレクリエーションを当事者である高齢者の方がどのように思っていたのかはわかりません。
「こんな子供っぽいことやりたくない」と思っていた高齢者の方もいるでしょうし、「身体を動かしたくても動かせないから悔しい」と思っていた高齢者の方もいるでしょう。はたまた、そのような疑問や意思すら持たない、持てない高齢者の認知症の方もいたと思います。
介護業界に長くいると、「介護はこういうもの」という固定観念が生まれます。
- 「レクリエーションだから風船バレーしましょう。」
- 「動き回ると危ないから、折り紙か塗り絵してもらって。」
- 誰が聞くわけでもないのに、演歌や童謡が流れる室内
日本中どこの介護施設でも見られる光景で、誰も疑問に思わないと思います。
特別養護老人ホームの運営基準では、レクリエーションについて以下のように定められています。
特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準【厚生省令第四十六号】
第十九条 特別養護老人ホームは、教養娯楽設備等を備えるほか、適宜入所者のためのレクリエーション行事を行わなければならない。
これしか書かれていないから、なんとなく前からやっていたことをとりあえずやっておけばいいだろう。そうなりがちで、これが風船バレーになり、折り紙や塗り絵になり、みんなで歌を歌うとなっている訳です。そこに入居している高齢者やご家族の視点や顧客満足の視点が欠けていたのではないかと、ご家族の何気ない言葉で気付かされました。
高齢者が望む豊かな老後
皆さんは「自分が高齢者になったら、介護が必要になったらどのような生活を送りたいか」と考えることはありますか?私は仕事柄、いつもそんなことを考えます。
- 身体が不自由になってもできる限りのことは自分でやりたい
- 一人の時間を持ったりプライバシーの保たれた場所で過ごしたい
- 季節感や自然を感じられる環境でゆったりしたい
- 少しでも誰かのためになることができないだろうか
- 家族や気の合う仲間にも訪ねてきて欲しい
ケアファームが提供できる生活
ケアファームではこのように多くの方が考える老後生活の理想に応えることができると思っています。
- 庭の手入れを昔みたいにすることは難しいけど、種を撒いたり苗を植えたりならできるんじゃないか
- ひとり暮らしには不安があるけど、大勢の中で介護を受けるのには抵抗があるから個室で過ごしたい
- 季節を感じながら、たまにはテラスでゆっくりとコーヒーでも飲みたい
- 小さな子どもや障がい者の集まる場所で、頑張っている姿を見て刺激をもらいたい
- 今まで一緒に過ごしてきたペットとできる限り一緒にいたい
そんな、人間らしい環境の中で一人ひとりが満足のいく生活を送ることが、介護業界が目指さないといけない理想ではないでしょうか。