高齢者住宅

介護職員の不足を乗り切るには

人員配置の規制緩和検討

2021年12月、日本経済新聞の一面に「1人で4人介護可能に」という見出しが出ました。

特別養護老人ホームや介護老人保健施設では、利用者3名に対して職員(介護職員+看護職員)1名、つまり3対1が人員配置基準となっています。しかし一般的に介護施設の多くは、利用者2名に対して職員1名、基準より手厚い2対1の配置が行っていると言われています。

2020年2月の「第6回全世代型社会保障検討会議(内閣官房全世代型社会保障検討室 )」において、先進事例として「介護サービスの質を保ちつつ、業務改善や、見守りセンサー・ケア記録の電子化・イ ンカム等の活用により、2.8:1を実現する先進施設も存在」と紹介されています。先進事例がすでに基準より手厚い人員配置であることを考えれば、現在の3対1の基準ですらハードルが高いことを行政は認識しているのだと思います。その上で、今回の4対1という基準について、介護現場からは疑問の声が多く上がっているようですし、私も記事を読んだ際に首をかしげました。

確かにITやAIを活用することで、人員配置を緩和するということは理解ができますし、それができればとても好ましいことです。私たち介護事業者にとって、介護職員不足は大きな課題で、人員配置が緩和されれば少ない人数で施設運営が可能となります。昔と比較すると、たくさんの種類のセンサーやロボットが発売されていますが、現場の感覚から言えば、職員を少なくできるほどの機能を持っているのかといえば疑問です。認知症の方は想定外の行動を行うことも多く、センサーが充実してもその対応は職員が行います。少し前にパワーアシストをする機器のデモを受けたことがありますが、まだまだ使える場面は限られますし、金額も大きなものでした。

 

規制緩和の懸念点

私が懸念するのは、職員の配置基準が緩和されることで今よりも手薄な人数が基準となり、全体的な介護報酬が引き下げられるのではないかという点です。

職員の人数は、当然、介護の質や利用される方の処遇にも大きく影響します。今回コロナウイルスの拡大により、多くの介護施設で感染やクラスターが発生しました。周辺でも、職員の感染やご利用者の感染、職員のご家族にも感染が見られ、結果的には休んだ職員の代わりに他の職員が負担を受ける例をたくさん見ています。そういった面からもマンパワーは絶対に必要です。大きな法人であれば他の施設からのヘルプも期待できますが、単独の施設などでは難しい場合もあります。

単純に「効率化」や「生産性」という言葉だけでは語れないのが、介護現場の難しさです。過去には介護ロボット導入のための補助金も支給されましたが、経営的に導入が難しい施設も多かったと聞いています。施設の経営状態で、働く人や利用される方の処遇に影響が出てしまうことは、介護保険の本来の目的なのか疑問に感じます。

 

スキルアップと環境整備の必要性

介護保険事業者は、基準が変わればそれに合わせていかなければなりません。介護の技術や知識だけではなく、情報リテラシーや機器を使いこなすスキルも必要になってきます。介護の現場はどうしても、新しいものを受け入れ難い職場です。まだ電子カルテが導入されていない施設、記録は手書きという施設も数多くあります。新しいことを始めるには、職員全員の協力や理解、スキルが必要となりますが、それに対応できない職員も少なくありません。

今後、人員配置基準が変更になるかは分かりませんが、介護保険制度の継続性を考えれば今よりも基準が緩和されることは期待できません。私たち介護事業所は制度に合わせて柔軟に対応していくことが必要ですし、職員も介護技術や知識に限らず、さまざまなビジネススキルを上げておくことも必要だと感じます。職員に選んでもらう職場を目指すためにも、介護技術や知識以外のスキルアップができる環境を用意することも必要になってくるのではないでしょうか。

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