農場イベントで発表された、社会農業のポジティブな成果

農場イベントで発表された、社会農業のポジティブな成果

画像引用元:“AgriLand

アイルランドのケアファームで行われた研究イベントで、ソーシャル・ファーミング(ケアファームでの取り組み)が精神疾患からの回復を目指す人々に幅広い利益をもたらしているという結果が発表されました。自然と触れ合いながら社会とのつながりを取り戻すという、ポジティブな成果が示されています。 (原文のソーシャル・ファーミングは名詞を除き日本でより一般的なケアファームと表記しています)

 

アイルランドのソーシャル・ファーミング(ケアファーム)は

精神疾患から回復した人々に多様な利益とポジティブな結果をもたらすことが証明されています。それは、楽しく、地域に密着した、非臨床的な日常生活に根ざした方法で行われています。

こうした方法は、2019年3月5日にカーロウ県Rathoeにあるウェブ夫妻(リアムとシモーネ)の農場で開始されたソーシャル・ファーミング・アイルランド(Social Farming Ireland)の新しい研究の中でも重要なメッセージとして打ち出されました。

ウェブ夫妻の農場でこのほど開催されたイベントでは、地域のケアファームやその参加者、メンタルヘルスやその他のサービスに携わるスタッフ、地元自治体の議員、その他の関係者たちが集まり、ケアファームがどのように成長し、進化し続けているかについて話を聞きました。また、様々なメンタルヘルスの問題から回復した人々にとって、ケアファームがどれほど有益なものであるかについても話がされました。

 

農家の満足度

ウェブ夫妻は参加者を歓迎し、ケアファーム事業が家族に与えたポジティブな影響や、農場で過ごすうちに参加者が成長し、自信や幸福感を得ている姿を見ることで感じられる満足感について話しました。

ソーシャル・ファーミング・アイルランドの政策担当者である Aisling Moroney 博士は、国際的な研究とアイルランドの研究の両方で観察されているケアファームの幅広い利益について、自身の研究結果を共有しました。

研究で得られた成果の中には、

◆自然の中で過ごすことによる福利の向上、ストレスや不安の軽減
◆動物や植物の世話をすることの価値
◆生命の基本的な要素やサイクルとのつながりの再確認
◆目的意識や帰属意識の向上
◆ライフスキルや職業スキルの向上
◆自然の中での野外活動による体力や活力の顕著な向上――などが挙げられました。

同博士は、「ソーシャル・ファーミングの体験の中心となるのは、農家、他の参加者、そして農場に関連する幅広いコミュニティとの社会的なつながりの向上です。こうしたつながりは温かく自然で、プレッシャーもなく、参加者は(治療の)ケースとしてではなく、人として見られ、家族農場という日常的かつ普通の環境の中で、自分らしくいられると言っています」と話しました。

ソーシャル・ファーミング・アイルランドのナショナル・プロジェクト・マネージャーである Brian Smyth 氏は、「人を中心としたコミュニティベースのアプローチは、アイルランド政府の方針に完全に合致しているだけでなく、『変革のためのビジョン』で想定された精神衛生サービスの最良の実践内容と一致している」と指摘していましたが、これは、精神衛生サービスの分野で長年の経験を持つ元社会福祉士のGer O’Sullivan氏も同様の見解を示しています。

現在、ウォーターフォード精神保健協会に関わっている同氏は、ケアファームがいかに理想的に人々の回復に貢献し、自然や他人との生活に再参加する機会を提供しているか、また、匂いを嗅ぎ、味わい、身体的に活動し、他の人と一緒に笑いを持つための能力を再発見する上でケアファームがどのように機能しているかについて説明しました。

南ティペラリー精神保健サービスで働く作業療法士のLinda Martin氏とNoirin Forrestall氏は、これまでに一緒に働いたケアファームの参加者の一人の話を紹介してくれました。その人はソーシャル・ファーミングに参加して数週間で、それまでは家まで迎えに行かなければならなかったのが、自身で農場まで運転して行くことができるようになったほか、以前はとても遠慮がちだったのが、今ではのびのびと笑うようになったといいます。

参加者と精神保健サービスの両方からのフィードバックでは、ソーシャルファーミングは社会的モデルに基づき、医療モデルとは異なる方法で、回復に取り組む人々をサポートしているとの声が聞かれました。

 

活動が倍増

ソーシャル・ファーミング・アイルランドの全国コーディネーターのHelen Doherty氏によれば、ケアファームはここ数年に著しく成長し、2017年から2018年にかけて活動が倍増したといいます。

2018年には、22地域にまたがり、約300人の参加者のために2,600日以上の参加日数が提供されました。現在、訓練を受けたケアファーマーが60人、さらに60人がケアファーマーになるための訓練を受けています。 全国的なソーシャル・ファーミングの成長と発展の鍵となっているのは、農業・食料・海洋省(DAFM)がCEDRAイノベーション基金を通じて提供している資金です。農業・食料・海洋省(DAFM)のAnnamarie McNally氏は、DAFMがソーシャル・ファーミングの実践を重視していること、そして、その成長と発展のためにソーシャル・ファーミング・アイルランドと共同で行っている取り組みを強調しました。

Moroney博士による研究発表は、メンタルヘルス・アイルランドのスマイリー・パンケーキ・デー(Smiley Pancake Day)という毎年恒例の募金活動と重なり、ウェブ夫妻の農場や全国のケアファームでもその日、スマイリー・パンケーキ・デーの行事が行われました。全国各地のケアファームが、メンタルヘルス・アイルランドとその活動を支援するためにパンケーキを作りました。

ソーシャルファーミングの成果に関する報告書はhttps://www.socialfarmingireland.ie/で見ることができます。

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