画像引用元:“Depden care farm”
ケアファームでの活動は農家、利用者にどのようなメリットを与えるのか、またはケアファームを始めるにあたっての基本概念などが紹介されています。農家、利用者、機関の3者を軸に、どのようにケアファームが成り立っているのかが分かりやすく明記されており、農家へのサポートの重要さなど運営するにあたってのノウハウも多く記述されています。利用者に関しては高齢者だけでなく障害者、問題を抱えた若者など幅広い層がケアファームを利用している事が分かり、より多くの人に関心を持ってもらえるのではないかと思います。写真はどれも自然体で年齢層が幅広いことが目に見て取れます。記事の内容的にどの写真を使っても記事の内容に合い、ケアファームの良さが伝わるかと思います。
ケアファームと農場
農場をケアファームにするということは、社会的弱者に生活環境や労働環境を与えるということを意味します。農家は利益を得ることを目的とせず道徳的な目的を持って農場での日常的な作業を共有することで、ケアファームのメンバーの一員となります。農業の機械化が進む中、単純な手作業を行うことで、忍耐力と充実感を得ることができます。農家には、このケアファームを通じ、個人の農場を開放して農業という職種の良い側面を見せる事ができるというメリットがありますが、それ以上に、農業の世界に興味を持ち、役に立ちたいと思うより多くの人を歓迎したいという強い思いがあります。
どのような人がケアファームを利用するのか?
利用者に共通していることは、社会や家庭で苦しい状況にあり、社会的な機関の支援を受けているということです。家庭から追い出された若者、学校を中退した人、職業訓練を受けている人、軽度の精神障害を持った大人などが含まれます。
ケアファームを始める際は適切なケアファームに携わる機関との協力が推奨されています。ケアファームの実態をよく知っているソーシャルワーカーによって農家がサポートをしてもらえるからです。農家にはパートナーとして支援してくれる人が必要です。不安定であったり社会的立場の弱い人を歓迎することは、軽んじてはいけないことであり、一人で疑問や不安を抱えているとすぐに大事になってしまいます。また、ケアファームの活動が教育機関と繋がりを持ち、教育目的の一部である限り、利用者も保護することができます。これにより、弱者が自由労働として搾取されることを防ぐことができます。したがって農家/機関/利用者の三角関係は、利用者受け入れの基礎を形成し、保証となります。
「仕事」による社会復帰
本プロジェクトでは、「仕事」という言葉を「給料を得る権利を与える職業活動」として理解するのではなく、正確な目標達成を目指して心身ともに努力を必要とする活動である「労働の価値」という意味で理解します。だからこそ、いつも議題に挙がるのは、農場での「活動」です。個人を尊重して仕事が行われた場合、仕事は個人の幸福のベクトルとなるであろうという前提で議論を始めます。仕事とは健康のためでもあります。このプロジェクトでは、農家にとっても機関にとっても、決してお金の問題ではありません。真の軸となるのは人と人との関係性であり、コミュニケーションをとり、助け合う事が成功のケアファームを成り立たせています。
社会統合の場としての農場:誰のために、何を提案するのか?
農作業の機械化が進んでいるのは事実ですが、特にルクセンブルク州の南部では、農場の大部分が肉用牛の飼育を目的としたものになっています。藁のマルチング、飼料の準備、給餌、生まれたばかりの動物への哺乳、餌箱の掃除、柵やゴミ箱の塗装、生け垣の刈り込み、緑地の維持、ガーデニングなどと、初心者でも農場で行うべき手作業はまだまだあります。昼食の準備なども一緒に一緒にしてもいいですね。平凡と思われる活動ばかりですが、それらは多くの人にとって価値のあるものになります。家族のような暖かい環境の中で自然や動物と触れ合うこと、新しい仕事のリズムを見つけること、一見シンプルに見える活動によって、自分の能力を刺激することは意味のあることであり、新しいプロジェクトへの原動力になることもあります。
農場で行う仕事への疑問は、受入れ前に機関と利用者とが話し合い、解消しなければなりません。ケアファームのプログラムはもちろん季節、月、日、天候などによって大きく変化します。そして、人の再起を目的とした統合プロジェクトにとって、農場での生活に特有のリズムがあるからこそ、この場所はとても貴重な場所なのです。動物は毎日世話をしなければならず、作物はいつでも育てられるものではありません。このケアのために責任を持ち、変化に対応しなければなりません。 ケアファームを始めたいと考えている農家は、自分自身に自信を持ち、安心できる環境にいる必要があります。それはソーシャルファームの利用者を歓迎するために心理学の修士号が必要という意味ではありません。一方で、「聞き上手である事」「寛容である事」「忍耐力」「観察力」などの人間的な資質を持っていることが、受け入れの成功の決め手になります。しかしそれ以前での成功の鍵は、人を歓迎したい、共有したい、交流したいという気持ちにあります。このプロジェクトはすべての農家に適しているわけではないので、プロジェクトを立ち上げる前に熟考しておくことをお勧めします。
私たちは誰かのために良いことをしているような気がするし、彼の発展に貢献しているような気持ちにもなります。
ケアファームの参加者へのメリットとは?
このプロジェクトが人々に何をもたらすのかを学ぶことは、ケアファームを始めたい全ての人にとって有益です。ここでは、プロジェクト参加者のコメントを紹介します。
<農家側>
- 農家はその存在がより広く知られ、彼らの仕事はどのようなものであるかをケアファーム利用者が証言します。日々の仕事を農業の分野に関わりのなかった人と共有する事で、農業の価値を伝える事ができます。
- 社会的立場が弱かったり不安定な状態にある人に農場を提供する事で、利用者それぞれの目標の達成に貢献できるということから、彼らに「第二の人生」をもたらしているような感覚になります。
- 今まで交わる事がなかった農家と利用者の出会いに感謝し、農家の家族全員が利用者と真摯に関わりあっています。
- 利用者の受け入れをすることで、農家が日常の中で時々感じる孤独を消し去ります。
- また、淡々とした日常を一掃し、農家を元気にしてくれます。
- 利用者はだんだんと仕事に慣れ、仕事に対して主体的になるので農家は非常に助けられます。
<利用者側>
- ケアファームでの経験は常に彼にとっての息抜きであり、唯一無二の居場所であると表現されています。
- 動物との触れ合いは、愛情面または感情面で効果があります。
- 自然の中での肉体労働は、幸福感をもたらします。
- 障害のある方や社会性のリハビリ中の方にとってはこの仕事によって健常者と同じであるような感覚になります。
- 彼の能力と主体性は、仕事をする事で刺激されます。
- これらの刺激は、他の生活の流れに反映されている可能性があります(例えば、より多くの機関でのワークショップに対して活動的になったり、インターンシップや雇用を探し始めたりします)。
- 人は新しい関係性の構築を通じて社会復帰をし、 人との関係は将来の選択に役立つ新たな基準点を作ってくれます。
- ハードな日常から距離を取る事ができます。
- 全般的な幸福度が向上します(心理的・身体的影響)。
<機関側>
- この連携されたプロジェクトでは、機関が利用者と農家のニーズに応じて個別に支援を行うことができます。
- 利用者のこれまでの人生経験がケアファームを通して交わる事で、多くの人の人生を豊かにし、原動力を与えます。
記事引用元:Agriculture et social, une alliance qui a du sens! – Sens de la démarche