介護施設の求人から見えてくるもの
介護施設の求人を見ていると、色々なことに気付かされます。
いつも求人が出ている介護施設は、賃金や休日等の待遇が悪いのではないだろうか。人間関係が悪くて、職員が定着しないのではないだろうか。求人サイトの上位に出ている介護施設は、きっと課金して検索上位に出ているから、ネット求人にも力を入れて新しい取り組みをしているのではないだろうか。ケアマネの求人が出ているから、現任者が辞めるのだろうかなど、求人から見えてくるものはたくさんあります。
また介護業界は決して広くないので、「あの施設は3年で5人も管理者が入れ替わっているらしい…」という声が聞こえてくることも少なくありません。介護施設の管理者は、経営者であるケースは稀で、多くの場合はその介護施設・事業所の長というポジションです。日々の業務をこなしながら管理業務も行っているのではないかと思います。事業所のことだけを管理する場合、求人なども責任を持って管理する場合など、さまざまだと思いますが、一般的には「中間管理職」ということになるでしょう。
さまざまなリーダーシップの形
「介護業界に適したリーダーシップ」のかたちはどのようなものかをよく考えます。介護施設を引っ張っていくリーダーシップがよいのか、介護施設を支えるリーダーシップがよいのか。
ナポレオンは「一頭の羊に率いられた百頭の狼の群は、一頭の狼に率いられた百頭の羊の群に敗れる」という言葉を残したそうです。リーダーが指示を出し、組織を引っ張っていくタイプのリーダーシップは、リーダーに責任も権限も集中してしまいます。明確な目標に向かって実行していく組織には、合っているリーダーシップかもしれません。
以前働いていた法人内の医療機関を外部から見た時、医療は医師を中心として完全なるヒエラルキーになっていて、介護施設とは違うと感じました。どちらが正しいというものではなく、医師の指示・方針・責任のもとで患者に医療を提供するという役割においては、合理的なリーダーシップの取り方だと思います。
介護で求められるリーダーシップ
介護施設の場合はどうでしょうか。一人だけカリスマ的な職員がいても、その人が24時間365日ケアにあたる訳にはいきません。
「サーバントリーダーシップ」という言葉があります。羊飼い型リーダーシップと呼ばれたりもしますが、縁の下の力持ち的な立場で組織の力を引き出していくリーダーシップスタイルです。私は介護施設のリーダーシップは、そのような形が望ましいのではないかと考えています。以下の資料ではドーナツ型として紹介されていますが、医療機関と介護施設(この場合は介護老人保健施設/老健)の違いをよく表しています。
引用:期待される老健の役割~多職種協働で利用者の在宅支援を~(公益社団法人 全国老人保健施設協会)
介護施設の管理者のあり方
介護施設の管理者を求人で募集するという施設は多くありますが、今ある施設に管理者としてトップを入れることはとてもハードルが高いと実感しています。介護施設の立ち上げの時期であれば、皆が新人で、それまでの経過やしがらみがないので新しい人でも問題はないと思います。しかし、既存の介護施設では、現場と管理側の関係がうまくいかず続かなくなるケースがよくあります。
別の業種から介護施設の管理者になり続かなかったケースをいくつも見てきました。他業種のリーダーシップのスタイルが、介護施設に適しているとは限りません。郷に入っては郷に従えというように、経過を尊重し、職員の信頼を得ることが一番大切なのではないでしょうか。